・"本歌取り"というのは日本において、ひとつの技術ですよね。
というより、「そういうあり方しかありえない」という考え方ですね。
たとえばいけばなの研究会で、いっぱい独創的な花が出るわけですよ。でも、その独創的な花たちっていうのは、みんな似ている。なんで、それぞれに独創的であるはずのものが、あんなによく似ているんでしょう?
・西洋のデザインでも、使われているモチーフは、どこかから持ってきたものですよね。
それは、みんなも認めています。それでいいんだと。古いものから何かを取り出したからといって、独創的でないかというとそうじゃない。
"引用の織物"というものを否定する人は、今はいないと思う。でも、引用から新しいものを作ったということで、「独創性」を延命させようとする。そういう考え方自体が、私は"自我の神話"だと思うんです。
・"自我の神話"?
「私を発見したい」とか、「自分探し」とかいう言葉がありますよね。ところが自分というのは本当に探さないと分からないわけです。それを発見するのは、自分が勝利したときです。
つまり権力意志なんです。権力意志以外のところに、自分というものはないわけです。
・ずいぶん厳しいですね。
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