(1)カメラの構造といけばな撮影の基本
カメラは、4つの部分で出来ています。(左図)
A、レンズが被写体(ひしゃたい)の光を集め、
B、感光材料=フィルム・撮像素子に像を作る。
C、シャッターの開閉で感光材料に光を当て、
D、絞り(シャッター穴)の大小で光量調節する。
撮影の際、感光材料に当たる光量も、4つの部分の調整で決まります。
a、被写体(ひしゃたい)とレンズの明るさ、b、感光材料の感度、c、シャッター速度、d、絞り。
デジカメなら、これらの調整は全て自動で行いますが、いけばな作品の撮影には、以下1〜4、4つの注意点あります。手動(マニュアル)撮影(M)への切り替えも含め。順次説明していきましょう。
1、絞り穴dを小さく(値Fを大きく)、シャッター速度Cを遅くして、三脚を使用する。
2、作品からなるべく離れ、3倍ズーム(100mm)くらいの長焦点中望遠距離で撮る。
3、作品と見る人の視点位置(カメラの高さ)を確かめ、ファインダー像と見た目の違いを小さくする。
4、内蔵フラッシュ(ストロボ)は使わない。 ▲
(2)シャッター速度cと絞り値d
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図2 絞り穴の大きさ 左F2.8・右F11 |
シャッター速度cとは、シャッターが開いている時間。ながければ、感光材料Bにはたくさんの光が当たります。1000分の1秒、500分の1秒、250分の1秒と、シャッター速度c1目盛りごとに光量は2倍ずつ増えていきます。カメラを自動から手動(マニュアル撮影)に切り替えれば、シャッター速度cは、例えば、1/1000秒〜バルブ撮影(シャッターを押した間開いたまま)などと設定できます。
ながくシャッターが開けば、暗がりでも光を多く取り込めますが、1/100秒以下では手ぶれの危険があり、三脚などが必要です。シャッターもセルフタイマーを使う方が安全です。
カメラに取り込む光量調節のために開く、シャッターの「穴」が絞りdです。「穴」の大きさ=絞り値Fは、1.4、2.0、2.8、4.0、5.6と、F値が大きいほど穴は小さく、1段階1/2倍で、シャッター速度cと反比例します。また、絞り値Fが大きいほどピントの合ったように見える範囲が広がります。(→被写界深度) ▲
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(Photo1)F値大・シャッター速度長 |
(Photo2)F値小・シャッター速度短 |
感光材料に光を当てる適正な光量を、適正露出(てきせいろしゅつ)と言い、シャッター速度と絞りで調節します。同じ明るさでも、絞り値Fを上げた(穴を小さくした)分シャッター速度cを遅くすれば、光量は一定です。
F値を決めてシャッター速度で調節する機能(絞り優先AE)のあるカメラならそちらを使います。写真のピントが合う1点の前後で、ピントが合っているように見える一定範囲を、被写界深度(ひしゃかいしんど)と言い、(Photo1)のように、絞り値Fが大、シャッター速度が遅いほど深くなるからです。
逆に、後ろをぼかすには、絞り値Fを下げてシャッター速度を上げます。(Photo2)
いけばな作品を写すときは、被写界深度を深くして、手前から遠景までピントがぼけないように撮るのがふつうです。自動露出では絞り優先。三脚が使えれば、F値16以上にします。
作品や背景の色に白や黒などの明暗が強い時、露出補正が必要な場合があります。マニュアル撮影(M)にして、背景が明るい時はEV値(露出値)という値を+補正、暗い時は−補正します。適正露出は、+−で何枚か撮って見て、確認しながら、経験で覚えていくものでしょう。
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(Photo3)広角レンズ撮影 |
レンズの焦点距離はmm単位で、数値が少ないほど広い範囲が写せます。(広角レンズ)。数値35〜85mmくらいが標準レンズ。それ以上は望遠レンズです。今は焦点距離を変えられるズームレンズが主流で、光学3倍ズーム(焦点距離にして100mm前後)くらいの中望遠が標準で備わっています。
広角レンズは、引きの少ない狭い場所での撮影には便利ですが、近くの物はより大きく、遠くの物はより小さくという、遠近法が誇張され、人の目で見た実感からは離れます。
(Photo3)は、(Photo1・2)を広角レンズで写したもの。ほぼ同じ大きさのアンスリウムが、手前は大きく、後ろは小さく写っているのが分かるでしょう。
いけばな作品では、100mmくらいの望遠レンズで撮った時、目で見た印象に近い自然な遠近感になります。
ただし、デジタルズームは、撮影した画像を引き伸ばしてから切り抜いた、トリミングなので、光学ズームのような効果は期待できません。
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いけばな撮影のライティングの基本は、次の3つです。
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(Photo3)ライティングの基本。真上からのスポットライトと、椅子の上に置いた手作りのレフ板、左にもスチロール板を立てている。 |
1、作品全体に極端な明暗の差をつけない。
2、2種類以上の異なる光源を混ぜない。
3、カメラ内蔵ストロボは使わない。
内蔵ストロボを使わない理由は、真正面のライトでは立体感が損なわれ、背景に強い影がつくからです。自動発光しないように設定します。
標準的には真上からの「トップライト」がメインです。作品の後ろに伸びる影を消し、作品と背景の間に空気感を生み出します。プロのカメラマンは、背景に当てるバックライトも使って、背景のハレーションで作品を浮き立たせたりしますが、私たちはそこまではしない方が無難です。 ▲
影を和らげ光を行き渡らせるには、「補助光源」を使います。注意点は以下2つ。
1、レフ板(光を反射させて被写体を照らす道具。)を使用して下前からの光を補う。
2、.もう1〜2灯を増やして、少し前横から影がつかないように光を拡散させた弱めの光を当てる。
光源の前にトレーシング紙や白布を置くと、光の拡散と反射で露出差が小さくなります。
光源の色は写真に大きな影響を与えますが、今はふつう自動調整する機能が備わっています。それでも具合が悪い時には、手動のホワイトバランスで調整します。
レフ板は、照明の光を反射させ光量の足りない部分を補完する道具です。白い厚紙の二つ折りや、Photo2のようなもの、100円ショップで売っている銀色テープ・アルミ箔・車の遮光板・キッチン用品などで、かんたんに手作りできます。
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(6)サイズと画質、画像ファイル形式、ファイル容量
デジタル画像は、小さな色点(画素)を縦横に並べて作られます。その画像が持つ画素の数を画像サイズと言い、画素の密度を示す数値を解像度と言います。高画質Photo印刷用は以下の設定。
解像度 300〜350pixels/inchに設定し、その幅と高さが実際の写真サイズ。
現在の大半のカメラ機種は、A4サイズのプリントも可能なほどの最大画素数を持っています。
ウェブで使う画像は、ファイル形式JPEG(ジェイペグ)。解像度72pixels/inchに設定。
次ぎに画像の読み込み時間やモニターの大きさなどを考えて、画像の大きさや画質設定を行います。画質設定とは、JPEGを記録するときの圧縮度の違いで、(低圧縮=高画質)〜(高圧縮=低画質)の幅があり、高圧縮ほど画質が落ちるかわりに、画像読み込み時間は短縮されます。人の目にノイズが見えない範囲で圧縮度を決めます。
最後に、画像補正の基本を少しだけ書いておきます。デジタル画像の印刷や、ウェブ画像をくっきり見せるのは、アンシャープ処理です。作品写真は必要なトリミングの後、画像を倍率100%表示にして、アンシャープのダイアローグを開き、以下の処理を実行。画像がくっきりしたかどうか、荒れたところがないかを確認します。
量150〜200。半径1pixel、しきい値10〜20レベルを目安に適用。
トーンカーブやレベル補正を使うと、画像全体の明るさやコントラストを調整できます。画像を確認しながら慎重に行うことが大切です。写真を美しく仕上げるための画像修正ソフトで補正した場合でも、情報の一部は失われますから、大切な画像は、必ず元データもそのまま保存しておきましょう。 ▲
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