いけばな講座(鉄オブジェ)



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(1)鉄溶接によるオブジェ (2)準備 (3)材料 (4)作例 (5)制作
1プラン 2切断 3叩く・曲げる 4溶接 5仕上げ 6塗装

(1)鉄溶接によるオブジェ

↑Photo1、
鉄、つるうめもどき、からすうり
鉄は重厚強靭で粘りと重さがあり、質感もたいへん魅力的な素材です。第二次大戦後、勅使河原蒼風が、欧米で始まった鉄廃材を使ったジャンクアートを、日本で初めて制作しました。花をいける器というよりも、花材・オブジェとしての可能性を広げたのです。その後、草月を中心に制作が続いています。Photo1は、底を付けた3つの角管打ち抜き部品廃材ではさみ、鉄線3本を足にして立て、3つの角管を下に履かせています。 

(2)準備

<皮手袋、綿製の体を覆う服装、綿帽子、ズック靴>
溶接時、関連作業には火花が飛び散る作業が多く含まれます。手首・足首まで覆う作業着、皮手袋、帽子(髪の中に火粉を入れないため)など。
<
サングラス、マスク、日焼け止めクリーム>
アーク溶接は強烈な紫外線を発生し、炎症や視力低下を招きますので、裸眼で見てはいけません。また直接皮膚を曝しても、強い日焼けや火傷、水ぶくれ、シミなどの危険があります。
<
救急箱>
絆創膏、ガーゼ、包帯、血止めなど。
 

(3)材料

↑Photo2

1 鋼板 定尺板の最流通サイズは、3×6(サブロク914mm×1829mm)
2 形鋼材 平鋼、I形、H形・T形・C形・アングル・チャンネル
3 鋼管 (鉄パイプ) 丸・角
4 鋼線・鉄棒・鉄筋 5 打ち抜き部品の廃材 6 工業部品 

 

(4)作例 (1967年〜76年広瀬比沙雄作品

Photo3、鋼板と鋼線・鋼管  ↑Photo4、鋼管・打ち抜き部品の廃材 ↑Photo5、工業部品と鋼線・鋼管・溝形鋼

Photo3は、丸く同心円に切った鋼板を鋼線でつないで、日輪のように見せた壁掛け式のオブジェです。花を活けられるように、後ろに鋼管が付いています。
Photo4は、鋼管を組み合わせたオブジェに、レースリボンのように見える帯状の打ち抜き部品の廃材を組み合わせています。
Photo5は、電動機の部品を向き合わせに使い、鋼線鋼管を加えた魚への見立て。口元がいかにもそんな感じですね。魅力的な作品を仕上げるには、廃材や部品を、花材を見ていけばなを工夫するように見る。見立てのエスプリが大切です。Photo3〜Photo5まで、全て→真鍮ロウ付け装飾し、最後にスプレーラッカー塗装で仕上げています。 

↑他の広瀬比沙雄作品画像 →ギャラリー1965〜1976 ↑広瀬絢子作品画像 →ギャラリー1966・1979
 

(5)制作

1プラン
制作には、まず必要な材料を想定してプランを考えます。工房にある廃材など、材料によって臨機応変の変更もありますので、大ざっぱなデッサンを複数用意します。ポイントは以下3つ。
過去の作例から柔軟に学ぶこと、
花を活けるための落としの位置の工夫と、最後に水漏れの確認。
オブジェを立てる方法の吟味
については、花材を加えた時の安定を考えると底辺が広いことが理想ですが、見栄えを考えながら、立つ足が支える重心をなるべく作品中央部に持って行くように工夫します。 
2切断
Photo6、鋼管切断 ↑Photo7、鋼板切断機 ↑Photo8、ガス溶断
切断には、グラインダー・サンダー切断機ガスバーナーなどを用います。
グラインダー・サンダーは、鉄棒切る削る磨く等もできる、鋼材加工の必需品。切断には多様な切断機がありますが、回転する機具の使用は専門家の指示に従い、勝手な使用は避けましょう。
厚み3mm〜6mm程度までの
軟鉄厚板なら、バーナー切断(高圧酸素とガスを燃焼させて噴射圧力で切断する方法)も容易です。石筆でケガキ(下描き)して、動きのある自由な形が得られ、切り口も魅力的です。切断の際、落ちる火の玉は、火の粉と違い、溶けた鉄の液ですから、さわらないようにじゅうぶん気をつけてください。
↑Photo9鉄管を梃子で曲げる。 ↑Photo10、鉄板を機械で曲げる

3叩く・曲げる
鉄棒鉄筋などは、2本のパイプの間に挟み、テコの原理で曲げたい角度に曲げます。(Photo9)バーナーの熱で鋼材を少し溶かして曲げる方法もあります。
鋼板などは(Photo10)のように、機械で曲げたり、バーナーで熱し、ハンマーで打ちながら、好みの形に仕上げていく方法もあります。
4溶接
現材料どうしを溶融一体させてつなぐのが溶接で、私達の作業では、ガス溶接アーク溶接ロウ付けなどを使います。 
A、ガス溶接・切断
↑Photo11、アーク溶接 ↑Photo12、ロウ付け    ↑Photo13、グラインダー仕上げ
5仕上げ
組み立てが終わったら、次の3点に注意して仕上がりを確認します。
溶接した各部をハンマーで叩き、接合不良部分を探す。鈍い音がしたら補強溶接する。落としの水漏れを確かめる。 
水平なところに置いて、前後左右に作品高さの10%ほど倒して、復元力を確認し、倒れるようならバランスを直す
切断・溶接した箇所(ビード)の周囲に付着するカスをグラインダー・ハンマー・ワイヤブラシなどで取り除き、触って怪我をしないように仕上げる。Photo13
6塗装
鉄は放置すると赤錆が出ます。赤錆の風合いも魅力的ですが、劣化や他への付着などがあり、サビ止め塗装も必要です。(Photo14
鉄の質感を損ねずに自由に着色したい場合は、あらかじめ
赤錆を付けるか、接合剤を混ぜた粘土セラミクス系壁剤などで薄く下処理した後、光沢を抑えた薄がけ塗装で仕上げます。ロウ付け装飾した場合は、そこをシンナーで拭き取ります。質感をあえて変えたいなら、ラッカー車の塗装剤水性塗料壁仕上げ剤などを厚塗りして、樹脂光沢や、壁風の質感に仕上げます。
密着強度耐食耐湿性をもっと高めるには、1黒染め処理2カチオン電着塗装があります。
1 黒染め処理は、黒錆による酸化被膜を作る表面処理法で、空気や水を透さない緻密な被覆赤錆の発生を防ぎます。バーナーで熱して、水をかけて冷やすと出来ますが、液に浸して常温で簡単に黒染め処理ができる黒染液ニューブラッセンガンブルー液など)や、そのスプレーもあります。
2 カチオン塗装は、小物なら業者に頼めます。鉄の質感は損なうものの、複雑な形でも均一で高密着厚い塗膜を作ります。  

↑Photo14、 ラッカースプレー塗装

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