いけばな講座(デザイン演習1「対比による構成」)



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→(1)線・面・塊の対比 →(2)同一花材の花・葉・枝・茎の対比
→(3)色彩対比、質感対比
 →(4)形・方向性の対比 (5)同一(近似)物の対比

いけばなを、対比バランスリズムといったデザイン理論的な構成法を中心に展開するとどうなるでしょうか。
対比による構成」は、花・葉・枝・茎などのそれぞれの要素から、二つを対比的に強調します。同じ土俵上の比較で成り立ちますから、互いに異なるだけではなく、相違を浮き上がらせる『』も重要です。
二つの違いを効果的に見せるには、例えば、同形等量等質同一花材など、「共通の場」を作ることも大切なのです。

(1)線・面・塊の対比

←Photo1こくわづる、カーネーション
↑Photo2 アジアンリリー
↑Photo3 くわずいも、すすき、にせこばん草
花材を線・面・塊して捉え、上下・左右斜め・交差などの構図で、同量・同形に置くのは、シンプルな対比の方法です。
Photo1は、つるとカーネーションで交差を作り、Photo2は、四辺形の枠組みを、ゆりとにせこばん草で分割しています。
もう一ひねりした
対比の作例がPhoto3です。くわずいもの葉の半面に窓を作り、そこからすすきの穂を覗かせるパタンを3つ反復して、対比を作り出しています。「覗き見」は、視線を導いて作品中心の密度を高める効果があります。
 すすきや、葉の中を切ったくわずいもの水揚げを心配されるかも知れません。あらかじめしっかり水揚げしておけば、大丈夫です。


(2)同一花材の花・葉・枝・茎の対比


←Photo5 こでまり
↑Photo6 アガパンサス


←Photo4 クルクマ

対比をテーマにした一種いけは、花材の魅力を引き出すのに、うってつけの演習です。
同じ花材の花・葉・枝・茎の部分を分けるのです。
Photo4は、クルクマの花と葉を左右に分けています。2つは、一見同形には見えないかも知れませんが、上下の大きさを逆にして、点対称を少し意識しています。色面分割のような感じもしますね。
Photo5は、こでまりの花葉マッスで枝部分を斜め上下に挟むように対比させました。真ん中に空間があることで、全体が外に広がらず、枠づけされたようになります。この全体の枠付けが、対比の土俵を支えています。
Photo6も、アガパンサスの花と葉で方向性を変えたマスの対比です。


(3)色彩対比、質感対比


←Photo7 あかめがしわ、あじさい、つつじ
↑Photo8 いたどり、せいたかあわだち草
→Photo9 すぎ、つばき

同形同質のもので色が違うというようなものは、色彩でコントラストが際だってきます。
例えば
Photo7は、同じ広葉で形も少し似ている、赤芽がしわと紫陽花の葉を上下に重ねて並べたものです。赤芽のピンクと紫陽花の葉の緑が際立った対比を作ります。
しかしそれだけではありません。それぞれの枝に対する
葉付きや葉の質感の微妙な違いまで浮き上がりますから、逆に、Photo8のような、それぞれが似ているようでいて少し異質な花を、マッスで一繋ぎに左右に展開すると、違いが強調される効果もあります。
淡黄緑のかさかさした小さな花が集まるイタドリと、小さくても鮮やかでしっとりした黄緑の菊を集めたセイタカアワダチ草。同じ頃野に咲く対照的な花の、それぞれの持ち味を並べて見せるような演出もあります。    
Photo7・8質感対比になっていますが、色がもっと似たものでは、質感対比がさらに現わになります。Photo9は、杉の葉、椿の葉という異なる木の葉のマッスを上下に構成しています。花器も含めた形の類似から、その三つの対比を見る人もいるでしょう。

(4)形・方向性の対比

↑Photo10 セローム、モンステラ ↑Photo11 すぎ、エリカ
→Photo12 すいせん

よく似たのものを並べると、逆にの違いが強調されます。
単純ですが、
Photo10は、同じ里芋の仲間のセロームとモンステラを方向を変えて上下に置いただけです。
Photo11は、杉とエリカの花葉マッスを刈り込んで、2つのを作っています。ここでの杉とエリカは、対比の要素ではなく、色分けされた花器との対応で使われています。むしろ、花器を含めた左右の向きの呼応が対比なのです。
Photo12は、真っ直ぐ延ばした水仙の集合した花茎と、放射状2方向屈曲した水仙の葉という、方向性の違いで対比を作っています。

(5)同一(近似)物の対比


←Photo13 いちじくの葉
↑Photo14 たんぽぽ

質感対比の延長で、同じ花材の裏表花と実・種などの対比も面白い表現になります。Photo13は、いちじくの葉を破き、裏表を交互に重ねて、前後に並べています。葉の縁を破くのは、葉が持っている自然の動きを殺して、裏表の色や葉脈の表情の違いを引き出すためです。
 
同一近似対比は必ずしも一種いけに限りません。対比は、同一類似物であればこそ対照されますから、意外なところに類似性相違を見つけだし、出会いの場を作り出すことが、「対比による構成」のテーマと言えるでしょう。
Photo14は、左右でモンステラの表裏を分けたのに加えて、たんぽぽの綿毛分割を作っています。

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