を<網目形成イオン>、イオン結合性の強い Na+、Ca2+などを<網目修飾イオン>といいます。(Si−O結合は、共有結合性とイオン結合性が半々くらいとされています。 Siをイオンと考え、Si4+O2ーでけっきょくSiO44ー というまとまりで塩基を作っていると考えることもできます。)↑ Al3+、Pb2+・Zn2+などは、修飾イオンとしての作用以外に、Si−O結合の間に入って網目構造に加わることがあるので、<中間イオン>といわれます。(Pb2+・Zn2+については別の機会にふれます。→) <修飾イオン>の増加は、Si−O結合の一部を切ってガラスを開放的にしますから、うわぐすりの融点や粘性を下げたり、さらには結晶化をもたらしたりします。 単純なモデルでは<修飾イオン>は<架橋酸素>:<非架橋酸素>=1:1のときまでしか加えられません。このときSiO4 が鎖状の構造となって立体網目を作れなくなるからです。▲ これは、RO:SiO2 =1:1、つまりSi=1、O=3、O/Si=3のときにできる構造ですが、実際の高火度釉にはAl2O3 が含まれていますし、うわぐすりは素地とも反応しますから、もう少し複雑です。 Al3+は4配位で<網目形成イオン>Al45ー となります。このときOのー電荷が一つ余るので間に陽イオンを引きつけて、うわぐすりにAl3+が入るときには<修飾イオン>は、R:Si=1:1よりも多く入ることができます。(Zachariasen,Stevels などによる)▲ (2)釉式陶磁器のうわぐすりでは、その塩基性酸化物・中性酸化物・酸性酸化物成分という酸化物の形で、塩基性・中性・酸性に分けて現す、釉式という独特の形にすることが行なわれています。(図表20)
分子の数モルは、さまざまな分子がそれぞれに持っている質量(分子量、式量)で重量を割った値であると考えます。化学反応は、原子・イオン・分子の単位で行なわれますから、調合を重量比で表わすよりも各分子の数を示す釉式の方がうわぐすりを化学的に表わすことができます。 釉式は必ずしも現実のうわぐすりの構造をよく捉えているとはいえませんが、酸化物表示のR2 O・ROが修飾イオン、Al2O3 が中間イオン、SiO2 が網目形成イオンを示すと考えればそれなりに有効です。 釉式によってうわぐすりは、1. 塩基成分の組成、2. Al2O3・SiO2 の量比という二つの要素で捉えられるようになります。(加藤悦三「釉調合の基本」)▲ (3)陽イオン・酸素イオン間静電引力(陽イオンの分極能)うわぐすりの構造や性質を把握するには、ガラスの網目構造をもとにした考え方だけではなく、共有結合性フイオン結合性の度合い(結合の強さ)、酸性フ塩基性という尺度で考えることもできます。
〔2は酸素イオンの電荷、Zは陽イオンの電荷、aは酸素と陽イオン間距離、aは陽イオンの酸素に対する分極作用が小さいときには酸素イオンの半径と陽イオンの半径の和(rO+rM)に近いですが、陽イオンの分極作用が大きくなるほど(rO+rM)>aとなります。〕▲
↑図表21.陽イオン・酸素イオン間静電引力 ▲ <主な参考文献>
→5釉式座標による灰釉性状図 →6含鉄灰釉・土石釉の性状図 →7釉式計算の仕方 →8釉式を使った釉調合の方法 →9長石-CaO-BaO-MgO-ZnO系透明釉性状図 →10長石-CaO-BaO-MgO-ZnO系+Fe2O3性状図 ![]() |