釉裏の華
サイズ A4判 40ページ
掲載作品点数 37点(オールカラー)
定 価 1800円+税
発 行 日 1999年6月26日
著 者 広瀬典丈 広瀬さちよ
発 行 者 相原奈津江
発 行 所 エディット・パルク
617-0822 京都府長岡京市八条ヶ丘2-4-14-506
電話 075-955-8502▲
構成・デザイン 広瀬典丈
印 刷 小林印刷株式会社 Printed in Japan
写真撮影 杉浦昭夫・西井孝生、他
ISBN4-901188-00-3 C0072 \1800▲
水無方藍窯インフォメーション1
私たちは、典丈がロクロや打ち込みなどの形、さちよが絵つけという役割分担で、下絵を中心に、金・銀の上絵なども加えた磁器作品を作っています。
磁器はきめ細かな白い肌合いを持っていて絵つけ彩色に向き、硬く清潔な材質は食器としてもふさわしいものです。▲
水無方藍窯インフォメーション2
京都で修行後、1977年名古屋で独立、18年を経て今度は名古屋近郊、豊明市に窯を移しました。独立以来、東京、大阪、名古屋を始め、各地で二人展を毎年開催。99年には100回目の二人展を数えました。
モチーフは骨描きやダミ、吹き墨、布による浸し染めなどの手法を交え、野草・野菜・風景、古典意匠も描いています。
作品は、食器、花器、茶道具、アクセサリー、陶画など。
伝統をふまえつつ、それに捕らわれない自由な作風を心がけています。▲
陶器と磁器2
油を染み込ませた紙が半透明なように、磁器にも透明感があります。また、磁器は白いということも条件になっています。
私たちが今使っている磁器土は、いろいろ混ぜ合わせますが、中でもニュージーランドカオリンは白さと透明感が出せる優れた原料です。
これは初めはファンデーションに使うために輸入されていました。きめ細かく柔らかな肌合いに魅力があり、今では最高の磁器原料の一つです。▲
染め付け・釉裏彩
染め付け(そめつけ)は、青花(せいか)ともいい、素焼きやなま素地に呉須(ごす)というコバルトを含む絵の具で描き、その上に透明なうわぐすりを被せて焼く技法です。
うわぐすりにとけ込む呉須の発色で、鮮やかな藍色の絵が浮き出します。
こうした絵つけは絵の具の上にうわぐすりを乗せるので、下絵または釉裏彩(ゆうりさい)と呼ばれます。
呉須の他に銅を含む釉裏紅(ゆうりこう)の紅、鉄などを用いる銹花(しゅうか)の銹色、クロムによる緑、希土類酸化物を使った黄、紫、紅などがあります。▲
釉裏紅・釉裏五彩
釉裏紅は藍ではなく、銅を含む絵の具で描いて、赤を出す方法です。銅は高温で揮発しやすく、少しの窯の雰囲気や温度差、冷却の差でも色調が変わります。しかしその不安定さが逆に釉裏紅の独特の味わいです。
釉裏五彩(ゆうりごさい)は、染め付け・釉裏紅の、藍と赤の他 に、緑や黄色、茶色っぽい鉄の色が使ってあります。
三彩、五彩という言い方は昔からあって、五種類以上の色を使っても五彩といいます。
私たちは、うわぐすりの中にとけ込んだ、清澄で落ちついた深い色調に惹かれて、この技法を続けています。▲
下絵 (したえ)
下絵は、まず素焼きという、低い温度で焼いた素地に絵付けして、その上にうわぐすりをつけて焼きます。
同じ下絵といっても、釉裏彩はうわぐすりの中に絵の具が熔けこみ、うわぐすり自体に色がつきますから、描かれた絵の色は澄んだ透明感があります。
下絵にはもう一つ顔料絵の具で描く方法があります。これは素地の上に描いた顔料による絵が透明のうわぐすりを透して見えるものです。
顔料色は透明感が乏しく、ハーフトーンや逆にきつい色になりやすいといった欠点があります。▲
上絵(うわえ)
上絵は、いったんうわぐすりをかけて磁器の温度まで焼き上げてから、その上に、低い温度で熔ける絵の具で描いて、だいたい7〜800度の温度で焼き付けます。上絵と下絵は色合いも見た目も別のものです。
上絵にも和絵の具(溶液系)と洋絵の具(顔料系)があります。金銀は高温に耐えませんから、上絵で焼き付けるか箔を用います。
他にも色絵にはまだイングレーズと呼ばれる釉上に描いてうわぐすりの中に熔け込ませるような技法やうわぐすり自体で描く、金属溶液を使うなどさまざまな技法があります。▲
釉裏五彩 珍しくまた 困難な仕事
名古屋在住の陶芸家広瀬典丈氏とさちよさんは主人公が轆轤・焼成等の技術面を、奥さんが絵付をというおしどり作家である。
阪急美術部で、すでに何度か個展を開いているがこんどは主として「釉裏五彩」という珍しくまた困難な仕事に挑んで、これを世に問うことになった。
その成果がたのしみである。
古陶磁研究家 藤岡了一
(阪急百貨店本店美術画廊二人展1985年推薦文より)▲
洋絵の具と和絵の具
上絵の具には、洋絵の具と和絵の具があります。
洋絵の具は、塗料と似ていて、溶剤に顔料の粉が混ざった状態です。
上絵の具では、溶剤が油ではなくガラスですが、ガラス中に着色した顔料が混ざった状態では同じです。
どちらかというと不透明で絵の具を塗ったような感じの色です。
和絵の具は、金属溶液のようなもので、色のついたガラスですから、よく見ると、透明感があります。
本当は、和絵の具でも赤とか黄色は、透明な絵の具ができなかったので、しかたなく不透明なものを使っています。
でも、できるかぎり透明に見せようという努力があるのです。▲
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