釉裏の華 広瀬典丈・広瀬さちよ作品集3




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『色磁器 釉裏の華 広瀬典丈・広瀬さちよ作品集』page3
広瀬典丈・広瀬さちよ作品集 釉裏の華 ≫page1 ≫page2 ≫page4  展示会の記録
contents
page3|野草・野菜の絵付け|高取友仙窟|五百住乙人|田所茂晃|鍋島意匠|小紋・芙蓉手|吹墨|布浸し染め|
|安久津和巳|水の意匠|児島二二男|
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写真25
釉裏彩山帰来図八角鉢
(34×14cm)1994年
Octagonal bowl with smilax design painted in the underglaze.
野草・野菜の絵付け

野草・野菜のような野卑ともいえる画題は、「やつし」の文化背景を持つ日本ではことさら好まれ、俳画や鍋島意匠にも多く見られます。
写真25山帰来は前の家の片隅にあったもの、写真26とうもろこしはお隣からの貰い物で信州産。写真27ミニ大根は、斜め向かいの畑の間引き、写真28烏瓜は近くの緑地公園池のほとりの雑木の中で見つけたものです。
野菜や野草は地味なもののようですが、片身替わり小紋詰め金銀彩上絵など豪華に飾ることで生気を増し、舞台で見栄を切る立派な主役に変貌します。
写真26
とうもろこし 釉裏彩上絵陶画
(33.5×24.5cm)1994年
Corncob pipe Ceramics panel in the underglaz and the overglaze.
写真27
大根 釉裏彩上絵陶画
(24.5×33.5cm)
1995年
Japanese radish Ceramics panel in the
underglaz and the overglaze.
写真28
烏瓜 釉裏彩上絵陶画
(32×41cm)1996年
Japanese red cucumbers Ceramics panel in the underglaz and the overglaze.
新陶房での新しい作風に期待する

永年住みなれた名古屋近郊をはなれて、古窯ゆかりの地に新しい陶房を開き、心機一転、今までにまして意欲的な作品に挑戦される広瀬典丈・さちよ夫妻。
お二人との出会いは、昭和五十七年頃。その後も何度も拝見。東京・大阪・名古屋をはじめ各地の個展の案内をいただき、その活動範囲の広がりに目をみはっています。純白の薄い素地と釉裏彩(ゆうりさい)濃い藍染付(そめつけ)赤・緑が加わり、その上の金彩も美しい。繊細で斬新な作品を愛好するファンも多いと聞きます。
水無方藍窯(みなかたらんよう)で生まれる新しい作風、 作品に期待しています。

煎茶道 売茶流家元
  高取友仙窟(1996年推薦文より)

写真29
染付銀彩流水文変形鉢
(42×22cm)1995年
Vessel with design of streams painted in the underglaze blue and the silver.
新境地を求めての楽しい旅

はじめて広瀬典丈・さちよさんご夫婦にお会いしたのは、たしか横浜のデパートだったかと思う。かれこれ十年ぐらい前、それ以来、東京のデパートで作陶展をする度にご案内を受け、親しくさせていただいている。いつもお会いする度に、奥様のほゝえみ、ご主人のはにかむ少年のようなさま、なんともすがすがしい。
典丈さんが成形、さちよさんが絵付をと、最近は一段とファンも多く、注目を集めている。
器には料理を盛ってはじめてその美しさが表現できる。それでは広瀬さんご夫婦の作品にさかなを盛って、酒を注いで、お二人の楽しい焼き物の旅、新境地を祈って、かんぱい。

洋画家 五百住乙人
(一九九五年推薦文より)

写真30
染付銀彩流水文ランプ
(40×68cm)
染付銀彩流水文変形鉢
(44×12.5cm)1995年
Lamp with design of a stream painted in the underglaze blue and the silver.
Bowl with crooked with design of a stream in the underglaze blue and the silver.
心あたたまるお二人

今から約二十年前、初めて広瀬典丈、さちよさんにお会いしました。その頃、私は東京のデパート美術部に勤務中で、作品を拝見した時の感動は未だに忘れることが出来ません。東洋の伝統文化を背景にした斬新な感性に心を打たれ、展覧会を開催させていただきました。
むかし横山大観先生は「芸術は眼で描くよりも、心で描くのが本物である」と云われました。現状の文化は多元化、多様化の世界に突入して来ましたが、広瀬さんご夫婦の人間性に富んだ作品こそ、次の日本文化を支える一つだと私は思います。

ゲバントハウス主宰、工芸家
田所茂晃(1997年推薦文より)

写真31
釉裏彩金彩蕪図大鉢
(42×13.8cm)1998年
Bowl with turnip design painted in the underglaze and the gold.
鍋島意匠

鍋島焼きの意匠は高い技術と色面処理の巧みさ、野菜などを使う自由な画題によって、絵画的で力強い古九谷とはまた違った魅力があります。写真の大鉢は鍋島の直接の写しではありませんが、私もそれに習って野菜の意匠をたくさん描いています。

写真32
染付・釉裏彩食器類 1997年
Tableware with painted in the underglaz.
小紋・祥瑞手・芙蓉手

小紋は中国から伝えられ、日本でも広く用いられる伝統的な装飾意匠で、祥瑞手(しょんずいで)と呼ばれる日本向けの商品でもよく使われています。写真の急須の帯模様や小鉢の枠の中、角皿の片身替わり部分などに小紋詰めとして用いています。
芙蓉手(ふようで)は中国陶磁が生んだ伝統的な下絵意匠の国際商品。写真小鉢にある芙蓉の花弁のような割り付けからきた日本名です。

写真33
釉裏彩蜜柑図大皿
(43.5×7.8cm)1997年
Dish with orange design painted in the underglaze.
吹墨

吹墨は写真の大皿のように後で絵を描く部分を紙でふせ、呉須液を霧吹きする技法です。霧吹きの後かき削って白の部分を出すこともできます。
吹墨は柔らかい質感と奥行きで絵を浮き上がらせる効果があります。

写真34
釉裏彩ひなげし図ランプ
(37×56cm)1998年
Lamp with poppys design painted in the underglaze.
布浸し染め

写真のランプにも吹き墨が使ってあります。ここでは絵を浮き上がらせる効果でアールヌーボーのガラスの透明感とも通じる雰囲気をねらいました。
布浸し染めは、スケッチしてきたものに沿って切った布を呉須液に浸し、少し絞ってから器胎に押しつけます。描いたものとは違う偶然の絵の具の濃淡や布目の柔らかさが生まれ、さらに呉須の抜けたところに釉裏彩を加えると、計算されない面白味が加わります。
ランプのひなげしはこの方法の絵付けです。

 

写真35
釉裏彩鳩図陶箱(24×10cm)
釉裏彩羊歯図長頚瓶
(13.5×31cm)1998年
Covered box with dove design painted in the underglaze.
Vase with long neck with fern design painted in the underglaze.
一つの世界を創り出す力が…

広瀬典丈さん・さちよさんご夫婦の器には、まわりの空間を包み込んで一つの世界を創り出す力がある。一枚の絵が空間にストーリーをもたらすのと同様だ。器をそのまま飾るのもいい。食べ物をのせれば、温もりに溢れた暖かい世界が広がる。花を活けても素敵だ。
お二人の作品の繊細で美しい色使いと絵柄、シャープでありながらやさしい温かみのあるフォルム、そしてその存在感にはイラストレーターとして触発される点も多い。
装飾性と実用性を兼ね備えたお二人の器が今後どのような世界を演出してくれるか、これからもますます楽しみだ。

イラストレーター
 →安久津和巳(1998年推薦文より)

写真36
釉裏彩金彩鯉図陶箱
(25.5×12cm)
染付銀彩流水文長角皿
(41.5×30×6cm)1998年
Covered box with carps design painted in the underglaze and the gold.
Oblong dish with design of a streams painted in the underglaze and the silver.
水の意匠

水の表現は日本の絵画や工芸の世界では中心的なテーマの一つです。私たちも流水文波文流し模様など豊かな方法が試せるこの意匠が大好きです。
呉須の藍藍染め布とも共通の世界史的に古い顔料で、その色合いの連想は水につながっています。ダミ吹き墨のようなたっぷりと水を含ませ素地に吸わせる技法にも水の感触があります。
陶箱の波文は周辺の染付と中心の金彩による切り替え、長角皿は皿中央の藍と白の切り返しによって流水の変化と奥行きをつけています。
これからもさまざまな水の表現のヴァリエーションを考えていきたいと思っています。

写真37
釉裏彩流水魚図大鉢
(43.5×7.8cm)1999年
Bowl with design of fish and streams painted in the underglaze.
素晴らしいチャレンジ精神

素晴らしいチャレンジ精神、
センスの良さ、
とかく暗く成りがちな呉須のデザインに艶、エレガンスを感じる。
さちよさんのバイタリティが輝きになるのだと思う。

日本陶磁器デザイナー連盟会員
 ノリタケカンパニーデザイナ-
児島二二男(1999年推薦文より)

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